膠原病とは

「こうげん病って何ですか?」

私たちがよく聞かれるご質問です。
「膠原(こうげん)」とは、「コラーゲン」のことです。コラーゲンとは、皮膚や靭帯などを構成するタンパク質の一つです。
1942年(約60年前)、アメリカの病理学者Paul Klempererによって初めて提唱され皮膚・靭帯・腱・骨などの構成成分である膠原(コラーゲン)の異常が起こる病気を総称して「膠原病:collagen disease」と呼ぶようになりました(*1,*2)。
ただ、私たちが診察する病気全てを「顕微鏡の所見」に準じた「膠原病」に含めてよいのか、という議論はこれまで何度も繰り返されており、厳密にお伝えすると「膠原病と関連疾患」とする方が正確です。
現在、欧米ではこの呼び名は使われず、「結合組織疾患:connective tissue disease」や「リウマチ性疾患:rheumatic disease」と呼ばれています。日本でも使われてはいますが、呼びやすさもあり「膠原病」という名称が広く定着しています。
専門医の呼び名は、日本では「膠原病科医」と呼ばれることが多いですが、学会が認定している正式な専門医の名称は「膠原病専門医」という名称ではなく、日本リウマチ学会が認定する「リウマチ専門医」という名称になります。欧米では「rheumatologist」と呼ばれます。
この、膠原病領域でよく耳にする「リウマチ」という言葉は、ギリシャ語で「流れ」という意味を持ちます。
痛みの原因の成分が体内を流れて溜まるという考えが語源にあり、関節・骨・筋肉などの筋骨格系器官に痛みが出る病気を「リウマチ性疾患」と呼ぶようになりました。膠原病全般に「関節が痛い」「筋肉が痛い」などの症状が出やすいことから、「膠原病」と「リウマチ性疾患」はほぼ同じ病気を対象としています。
ここでは「膠原病と関連疾患」という呼び名でご説明します。
例えば「心臓病」という総称の中に、狭心症・心筋梗塞・不整脈・弁膜症などの各病気が含まれるように、「膠原病と関連疾患」という総称の中に、関節リウマチなど約30種類以上の病気が含まれます。

「膠原病って難しいですね」

こちらも患者様からよく聞かれる言葉です。
同じ医療従事者の専門外の方からも、しばしば耳にします。
なぜ、難しいのか。前述のように、そもそも病気の概念が分かりにくいこと、そして、「まれ」な病気で「全身に症状が出る」しかも「個人によって症状が多様」だからだと考えています。
「まれ」なので馴染みが薄いです。
高血圧なら、かかったことがない方でもどんな病気かイメージができると思います。日本人の成人の約2人に1人は高血圧をお持ちだからです(*3)。
しかしながら膠原病の中で最も患者数の多い関節リウマチでさえ一般人口の約100〜170人に1人(*4)…と考えると、「膠原病」という名前すら聞いたことがない方が多いのも御納得いただけるかと思います。

「全身に症状が出る」けど「個人によって多様」。
同じ全身性エリテマトーデス(SLE)と診断されていても、顔の赤みが出る人もいれば、腎臓の炎症があったり、それらがなくても他の症状から診断がつく場合もあります。
膠原病専門医でも診断に少し悩むこともあります。
各疾患の診断や治療は、また別の記事で改めてお話させてください。
SERLAの活動を通じて、「膠原病って難しい」というお気持ちを少しでも和らげられるよう努めてまいります。

*1 Paul Klemperer et al. JAMA.1942; 119(4): 331-332.
*2 Paul Klemperer. Am J Pathol.1950; 26: 505-19.
*3 厚生労働省.平成30年国民健康・栄養調査.第55表 高血圧症有病者の状況 – 高血圧症有病者の状況、年齢階級別、人数、割合 – 総数・男性・女性、20歳以上
*4 Yamanaka H et al. Mod Rheumatol.2014; 24(1):33-40.

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