日光過敏症と紫外線対策

「お日様に当たると、顔が真っ赤になったりしますか」

私たちが患者様によく伺う質問です。

「日光過敏(光線過敏)症」という症状を確認しています。
日光過敏症を生じる病気は下記のような病気が考えられますが(下図)、私たち膠原病科医は、全身性エリテマトーデス(以下SLE)、シェーグレン症候群、皮膚筋炎という病気に留意しています。

「日中、サッカー観戦をしていたら、急に熱が出てきました」
「学校の朝礼の時に、外でずっと立っていたら、関節が痛くなりました」
「スキーに行ったら、顔が赤くなってきました。日焼けかなと思っていたのですが・・」

全て、紫外線曝露を契機に膠原病の発症・悪化が想起された、実際に出会った患者様のエピソードです。

日光過敏症のある方にとって、最も重要な刺激は「紫外線」です。
紫外線によってSLEなどの病気が発症・悪化しやすいからです(1)。
一般的に、光や電波の総称である「電磁波」は、波長の長さによって下記のように分類されます(下図)。

紫外線(UV: UltraViolet)は、10-400nmの波長を持ち、大きく5つに分類されます。
その中でも、特に重要なのは、地表に届くUVAとUVBです。
UVAは窓を通って室内にも届くため、家や車の窓にUVカットフィルムなどを貼ることもお勧めです。
UVAは肌の奥深くの真皮まで届きますが、UVBは表皮まで届きます(下図)。
地表に届く紫外線の95%はUVAですが、5%であるUVBの方が皮膚癌のリスクなどにおいて、皮膚への影響は大きいとされております。

SLEの方の日光過敏症は、UVAもUVBも関係すると報告されています(2)。
皮膚筋炎の方は、UVBに対する反応が低下しているという報告もありますが(3)、いずれにしても十分な紫外線対策が重要です。
ちなみに、患者様から「レーザー脱毛をしても良いですか」というご質問をいただくことがあります。
ざっくりお伝えしますと、施術自体は可能です。
医療レーザー脱毛のレーザーは700nm以上の波長のものが多いため、紫外線(10-400nm)とは異なりますので、禁忌ではありません。
ただ、ステロイドなどを使用していて皮膚が脆くなっている方や、免疫抑制剤を使用している方は、脱毛処置に伴う「やけど」や「感染症」にも注意が必要なので、主治医や施術する施設と十分にご相談してください。
日本リウマチ学会のホームページにも記載がありますのでご参照ください。
「全身性エリテマトーデスですが医療脱毛に行ってもいいですか?」のリンク

紫外線対策

「実際にどうしたら良いですか?」
患者様からよく聞かれるご質問です。
具体的に、下記のような対策が推奨されています(下図)。

日光を浴びることは、ビタミンDの合成に必要で、気分転換にも良い効果があるので(4)、屋内に引きこもることを推奨しているわけではありません。
ご自身の日常生活で可能な範囲で工夫をしていただけますと幸いです。

日焼け止めは、SPF 50以上、しっかりした量を、2時間毎に塗る

日焼け止めには、有機系、無機系、クリームタイプ、スプレータイプ、SPFやPA表記のあるものなど様々な種類があります。
SPF(Sun protection factor)は、UV「B」に対する防止力を評価した指標で、高いものほど効果があります。
PA(Protection grade of UVA)は、UV「A」に対する防止力を評価した指標で、「+」が多いものほど効果があります。
米国ではPA表記はされておらず、日本での評価指標になります。
一般的には日常生活の範囲であればSPF:15程度、屋外の活動であればSPF:30以上(5)、SLEの方の場合はSPF:50以上のものが推奨されております(6)。

また、適切な量を塗らなければ、SPFで期待できる効果が得られません。
一般的には「ティースプーンルール」という小さじ1杯を目安に、身体の部位によって、下記のように塗ることがおすすめされています(7)。
また、効果の維持のために2時間毎に塗り直すことが理想的ではあります。

「面倒だなあ」と感じられる方もいらっしゃるかと思います。
ですが、紫外線曝露による病気の悪化の報告や、実際に日常臨床で春先〜夏の紫外線が増える時期に「急に赤くなりました」「急に熱が出てきました」とSLEなどの病気の悪化や発症を、多々目にしている私たちにとって、紫外線対策の重要性を切実にお伝えしたいと思っています。
この情報が、少しでも皆様の日常を守る一助になれますと幸いです。

【参考・引用文献】
1. Lehmann P et al: Autoimmun Rev. 2009;8: 456.
2. Lehmann P et al: J Am Acad Dermatol. 1990;22(2 Pt 1):181.
3. Dourmishev L et al: Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2004;20(5):230.
4. Up to date. “Selection of sunscreen and sun-protective measures; introduction”より引用
5. Up to date ”Selection of sunscreen and sun-protective measures: SPF“より引用
6. Up to date ”Overview of the management and prognosis of systemic lupus erythematosus in adults; sun protection“
7. Isedeh P et al: Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2013 Feb;29(1):55-6.

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