レイノー現象

「先生、指が白くなってきました」
寒くなり始めると、よく伺う症状です。
「去年から指が白くなって、すぐ消えるから気にしなかったけれど、今年はひどくなっている気がするから…」と精査を希望される方もいます。
中には、「数十年前からあったけど、年のせいかなと思っていた」と、気にせず過ごしていた方もいらっしゃいます。

寒くなると手指が白くなり、次第に元の色に戻る_________
これは、「レイノー症状」「レイノー現象」と呼ばれ、一般人口の2%〜10%前後にみられると報告されています。

1862年、レイノー医師によって初めて報告された現象です。
明確な診断基準や検査などはなく、下記症状がみられる場合に「レイノー現象」と診断しています*(1)。

なぜ、このような色の変化が起こるのでしょうか。
本来、冷たいものや寒さに曝露したり、精神的に緊張すると、生理的に血管がぎゅっと縮みますが(収縮しますが)、血管の保護機能により血流は保たれます*(2)。
しかしながら、レイノー現象を持つ人は、この保護機能が障害されているため、血流が途絶えてしまい、図のように白色(血流が途絶えた状態)、青色(酸素低下を起こしている状態)、赤色(血流が回復した状態)と変化するのです。
この変化は手指以外にも、鼻・耳の先端や、足の指にもみられることがあります。


レイノー現象の起こる原因として、特に原因のない「原発性」と、何らかの原因による「二次性」に大別されます(下図)。

「二次性」にも様々な原因が挙げられますが、私たちが診療している「膠原病」も多く含まれます。ある研究では、はじめ「原発性」と診断された3029人のうち、その後、37.2%が「膠原病」と診断されたと報告されています*(3)。
その予測因子として、40代発症、爪の周囲の血管異常(爪郭毛細血管異常)あり、重症で頻回のレイノー現象が見られる場合は、膠原病への進展がありうるとされています*(3)。

「二次性」の中でも「全身性強皮症」では、診断に用いる分類基準の項目として「レイノー現象」が含まれており、早期診断の鍵となるため、レイノー現象を放置しないということはとても大事です*(4)。

治療:最も大事なことは「保温」

治療には、非薬物治療と薬物治療があります。

残念ながら、レイノー現象の特効薬、根本的な治療薬はありません。
また「レイノー現象」の診断名で保険適応のある薬剤もありません。
高血圧治療で使用されるカルシウム拮抗薬は、レイノー現象の発作回数を減らしたという報告*(5)もあり、日常臨床でも使用される薬剤の一つです。どのような薬剤を使用するかについては、指の状態、臓器障害の有無など他の症状も考慮されるため、主治医とご相談ください。
薬剤治療以上に、まず重要なことは「保温」です。
具体的には、温かい飲み物を飲んだり、お湯で手指を温めたり、寒い日は手袋や帽子、ヒートテックなどの全身の防寒対策や、ホッカイロを携帯することもおすすめです。
前述の通り、「指が白くなっている時は、血流が途絶えている」状態を反映しています。
手指が白くなったら、「すぐ戻るから」と放置せずに、温められるように工夫してみてください。
また、タバコを吸う方は「禁煙」、感情のストレスや緊張もレイノー現象を誘発しうるため、リラックスできるような工夫も大事です。
血流が途絶えている状態にさらされ続けていくと、「指尖潰瘍(しせんかいよう)」と言う、指の先端の壊死に至ることもあります。
指尖潰瘍については、改めて別のコラムでお話したいと思います。
「指が白くなる」と気になる時は、どうぞお気軽に膠原病科医へご相談ください。

■引用文献
*1.Fredrick M. Wigley et al: N Engl J Med 2016;375:556-65.
*2. Flavahan NA: Nat Rev Rheumatol 2015;11: 146-58.
*3. Pavlov-Dolijanovic SR et al: Rheumatol Int 2013;33:2967-73.
*4.Park JS et al: Arthritis Res Ther 2015;17: 77.
*5. Thompson AE, Pope JE: Rheumatology (Oxford) 2005;44:145-50.

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