世界は二つに分かれてしまった。
運動器エコー検査(=関節や筋肉に対する超音波検査)と出会い、わたしの世界は、運動器エコー検査に出会う前と出会った後に二分されました。
一度使うと、もう使う前のあの頃には戻れない、そういったものは世に溢れています。
全自動ドラム式洗濯機の威力を知ると、もう”あの頃”には戻れません。
自動食洗器の便利を味わうともう”あの頃”には戻れません。
いわんやエコーをや、なのです。
関節エコー検査は痛みを「見える化」する
いま、「見える化」が流行っています。
「見える化」とは、ビジネス界隈において、業務フローや結果を組織内で常に共有し、速やかな対応に結びつける取り組みのことを指しています。
医療ではどうでしょう?
見えているようで、見えていないもの。
それはどれほど患者さんと医療者の間にこぼれ落ちているのでしょうか。
例えば「痛み」。例えば「病状」。
共有すべき症状をどれほど両者で分かち合うことができているのでしょうか
いつの時代だって、言葉は人の心を伝えません。
病からくるその病苦を、自分以外の誰かと共有する手段として、言葉はあまりに不十分です。
そんな足りない言葉をやりくりする一方で、私たち医療従事者も、患者さんの痛みに届かないもどかしさを感じています。
そこで運動器エコー検査です。そのお互いのもどかしさを解消する一助となります。
エコー検査は患者さんの抱える痛みを「見える化」します。
一見して腫れていない指も、エコー検査をあてれば、ぷっくりとした腫れがみえ、そこに痛みの原因となる「炎症」が見えます。
簡単、早い、安全、被爆しない、安い
エコー検査は簡単です。観察する皮膚の上に、ゼリーをぶりぶり乗せて、やさしく機械(プローベ)をあてるだけで画面にすべてが写ります。その時間、わずか1秒。針をささず、被爆せず、CTやMRI検査に比較して安価に検査ができます。
これからはエコー検査の時代
これからエコー検査は更に発展します。
リウマチ膠原病領域では、関節のみならず、腱、筋肉、筋膜(筋肉を包む膜)、血管、爪まで、その検査対象が拡大しています。
また、「診断」のためだけでなく、「治療」の補助としても使用されます。
痛みをとる関節注射や、硬くなった筋膜をほぐす注射も、エコー検査で観察しながら行えるようになり、より効果的に投与できるようになりました。
パラダイムシフトが今まさに起きているのです。
患者さんの痛みを「見える化」し、痛みの原因を素早く安全につきとめ、早期診断、治療につなげる。
そんな世界を実現するために、運動器エコー検査はなくてはならないツールとなるでしょう。
今回は運動器エコー検査に対する熱い思いを、抒情的コラムニストに語っていただきました。
もちろん、エコー検査が万能というわけではありませんが、エコー検査によって、これまで見えなかった世界の一部が、簡単に見えるようになったことは大きな進歩ですね。
ご一読いただきありがとうございました